入居者Aさんが過失により自室で火災を起こしてしまいました。
損害はAさんの家財のみならず、お部屋の壁や天井にまで及びました。
壁や天井は建物(=大家様の所有物)になりますが、大家様はご自身が加入する建物保険を使うべきか、入居者Aさんの加入する家財保険の特約(借家人賠償保険)を使うべきか迷われると思います。
入居者の借家人賠償責任保険か?
「火を出したのはAさんなのだからAさんの保険を使うべきだろう。」
ということで、入居者Aさんの加入する少額短期保険の家財保険の特約(借家人賠償保険)を使う判断をされることも多いと思います。
しかし、次の点を考慮する必要があります。
借家人賠償はAさんの賠償義務のある部分だけが支払われます。
つまり、修理に100万円掛ったとしても全額出るわけではありません。
難しい規定は割愛するとして要は建物の築年数によっては古くなった分は差し引かれて、時価額で支払われます。
その結果、支払われる保険金が修理代金に満たないことが発生します。
例えば修理代が100万であっても支払保険金は90万になります。
大家さんの火災保険のメリット
一方、建物保険は各保険会社が様々な商品を出しているので一概には言えませんが、時価基準ではなく、新価基準で保険金が支払われるといった商品が主流です。上記の事例では、そのまま100万円が保険金として受け取れます。
さらに臨時費用(お見舞金のようなものです)が10%~20%加算される場合もありますので、合計120万円支払われるような結論になることが多いです。
もちろん、火災を起こしたのはAさんなので、大家様が建物に加入している保険会社は、大家様に保険金を支払った後、Aさんに求償(=請求)することになります。
(保険会社の判断や商品によっては請求しない場合もあります。)
なお、火災保険は、自動車保険のように使うと保険料が上がるといった規定がありません。
そこで、大家様は、入居者Aさんの保険会社と交渉する煩雑さを避けて、まずはご自身の保険会社に建物の事故に関する相談をすることをお勧めいたします。
入居者Aさんの保険会社との交渉は、保険会社に任せておくのが得策と言えます。